ジェネリックで得する人と損する人の違い
2016/08/13
こんばんは、どくたあ すまあとです。本日は、後発品について何かしらの意見を述べるであろう6人のポジショントーカーのその意図についてご紹介します。この意図をご紹介することで、ポジショントークに惑わされずに後発品に対する正しい理解が進めば幸いです。
まず後発品について何かしらの意見を述べる登場人物は、大きく分けますと6種類存在します。厚労省をはじめとした公務員(つまりは政府)、病院経営に携わる医師、病院経営に携わらない医師、薬剤師、後発品を開発する製薬会社、先発品を開発する製薬会社です。
この6種類の登場人物を「先発品から後発品に切り替わることで得する人と損する人」という切り口で分類しますと、下記になります。
得する人:病院経営に携わる医師、薬剤師、後発品を開発する製薬会社
損する人:先発品を開発する製薬会社
どちらでもない人:厚労省をはじめとした公務員、病院経営に携わらない医師
病院経営に携わる医師、薬剤師、後発品を開発する製薬会社の3者は、先発品から後発品に切り替わることで得をする人です。
そのため、基本的には後発品を擁護するポジショントークを展開します。この擁護する理由が、薬を飲む患者の都合を考えての理由であればいいのですが、残念ながら彼らの都合でしかありません。
ですので、薬の効果と関係のない理由で彼らが後発品を後押しするその背景についての理解は、後発品を服用する可能性のある患者にとって大切です。
病院経営に携わる医師
病院経営に携わる医師が得するという背景には、DPCという医療費の計算方法があります。医療費を計算する方法には、出来高算定と包括算定の2種類がありますが、DPCは後者の包括算定による計算方法です。
この計算方法ですと、例えば患者が大腸がんで入院した時、1日に算定できる医療費は1000点と全国共通で決まってます。
そのため、大腸がんの治療として投薬される薬が、お値段の高い先発品であろうとお安い後発品であろうと、病院側が請求できる医療費に変わりはないのです。
高い薬を使っても安い薬を使っても請求できる点数が同じならば、最低限の経営センスを持ち合わせた経営者であれば、当然安い後発品を使います。
薬剤師
薬剤師が得するという背景には、後発医薬品調剤体制加算という後発品処方率に応じて調剤報酬点数が加算される制度にあります。この制度によれば、薬局は後発品の処方率を高めれば高めるほど、処方箋受付1回あたりに算定できる調剤点数が下記のように高くなります。
1.55%以上なら18点
2.65%以上なら22点
※2015/10/19後発医薬品調剤体制加算の新指標に基いて訂正
薬局が処方する医薬品の調剤数量のうち、後発品の調剤数量が占める割合が上記数値以上ならば、その数量に応じた調剤点数を請求できるのです。
後発品を開発する製薬会社
後発品を開発する製薬会社が得するという背景は、言わずもがな。後発品メーカーは、先発品メーカーの市場を食ったら食った分だけ儲かります。
ただし、病院や薬局にとって必ずしも先発品よりも後発品が儲かるわけではないです。といいますのは、薬の値段は、患者に売る値段と、病院や薬局に売る値段により違いがあるからです。
前者は薬価基準により政府により定められていますが、後者は後発品メーカー(医薬品卸)と病院や薬局との交渉により決まります。
例えば、薬価基準により100円と決まっている先発品と、70円と決まっている後発品があった時に、患者にとっては後発品の方が安いです。
しかし、病院や薬局にとっては、薬価基準の8割で仕入れた先発品と、9割で仕入れた後発品であった場合に、前者は20円の儲けが出ますが後者ですと7円の儲けしか出ません。
この7円に後発医薬品調剤体制加算の1.8円(後発品の処方割合が50%以上の薬局かつ薬剤の仕入れ単位を100包装単位として仮定)を足しても合計8.8円にしかならず、結果として先発品を患者に売った方が儲かる計算です。
以上のように、病院経営に携わる医師、薬剤師、後発品を開発する製薬会社は、基本的には後発品を売ることで得をします。しかし、どれだけ得をするか?については、後発品メーカーと病院や薬局の価格交渉により決まります。
持ちつ持たれつの関係にある3者だけに、彼らの基本スタンスとしては後発品を擁護するポジショントークを展開するということだけを頭に入れて頂ければ幸いです。
次に、先発品から後発品に切り替わることで損する立場にある先発品を開発する製薬会社が先発品を擁護するポジショントークについてご紹介します。
先発品を開発する製薬会社
先発品メーカーの言い分としては、後発品は先発品と比べて薬剤効果が劣らないことを証明しただけであって、優れていることを証明したわけではないですよね?優れているならまだしも、安全性を証明するための情報量も先発品と比べて少ないですし、有効成分が同じだからといえ先発品と後発品を同じものとして扱うのはいかがなものでしょうか?ってことです。この主張は…
一見何かを言っているようで、実は何も言っていません。
といいますのも、有効成分が同じである以上はその疾病に対する薬の効果は十分に担保されており、有効成分以外の違いは先発品と後発品だけでなく、先発品と先発品の間にもあるからです。
これについては、かの有名なディオバン事件の薬を例にご紹介します。
スイスの製薬会社ノバルティス社が開発したディオバンという高血圧薬の有効成分は、ARBです。このARBという有効成分が含まれた薬はディオバン以外に先発品だけで7種類が発売されております。この7種類すべての先発品がARBという有効成分を有しておりますが、有効成分以外、例えば添加物はそれぞれ異なります。
ではこの添加物により先発品間でも効果に違いが出るか?といえば、はっきり言って臨床で考慮する程度の違いはないです。
厳密には効果に違いが出ますが、その違いは製剤間の違いから生まれるものでなく、生体間、つまりは患者個々の状態に応じて違いが生まれるのです。
以上のように、後発品は先発品と比べて違いがありますが、この違いは先発品と先発品の間でも生じる違いです。
すなわち、先発品と後発品の製剤間の違いを証明しても、その証明は先発品と比べて後発品が劣るということの証明にはならないのです。
最後に、先発品から後発品に切り替わることで得も損もしない立場にある厚労省をはじめとした公務員、勤務医など病院経営に携わらない医師についてのポジショントークについてご紹介します。
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