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ストレス社会を闘うあなたに猫を。

【読者企画】徐東輝さんインタビュー ①若者と政治

      2016/08/16

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小室:はじめまして。徐さんに初めて気付いたのは2015年の9月頃。NewsPicksでのコメントを読むと大学院生とまだ若いのに政界の展望や重要な政策課題に関して深く理解している若者がいるなと思ったのがきっかけです。その後、プロピッカーに選ばれたのもなるほどな、と思ったものです。

:恐縮です。

小室:とんでもない。コメントを読むたびに勉強になるな、というのが実感です。
今日は政治に関して関心をもつようになったきっかけ、これまで行ってきたこと、今後について教えて下さい。

 

大学に入学した頃まで

:はい。小学生、中学生、高校生と成長し、社会の様々なことが分かるようになっていくにつれ、国を作る根幹にある法律や政治の力で社会的な課題を解決できるといいなと考えるようになりました。そして法律に関われる弁護士になりたいと思いロースクールを、そしてせっかくなら、地元で一番難関の京都大学を目指そうと考えました。

  何とか頑張って京都大学に入学すると、英語が好きなことから留学しようという思いが強くなり、2年生の時にニュージーランドに留学しました。実は留学するまでは、「俺は京大生だぜ」と、斜に構えて世の中を見ていたような気がします。

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  しかしニュージーランドに行くと誰も京大を全くと言っていいほど知らない。さらに現地の先生に「君がどんな教育を受けてきたかは知らないが、君がどんな世界を見てきたのかを説明して下さい。」と問いかけられると私は満足な回答ができず、目が覚めた気がしました。僕から京大という大学名を無くしたら何も残らない。本当にどうしようもない人間にしか過ぎないと痛感したのです。

  そんなことを考えていた頃に、クライストチャーチ地震に遭遇し、さらに東日本大震災が起き、ボランティアをしながら今後どうしようか今まで以上に真剣に考えるようになりました。

 

政治に強い関心をもつきっかけ

小室:徐さんが政治に強い関心をもつきっかけは何ですか。

:3つあったと思います。1つ目に私は在日韓国人であることです。私の国籍は韓国にあります。それだと日本でも韓国でも投票できなかったのです。

小室:えっ、どの国でも投票できないのですか。

:そうです。政治の上ではどちらにも帰属していない存在だったのです。もっとも、朴槿恵政権が誕生した2012年の大統領選挙から、韓国も在外国民の投票を認めることになり、やっと在日韓国人も韓国の大統領選挙では投票できるようになりました。実は日本も在外国民の投票が認められるようになったのは1998年からなのでそんな昔のことではないのです。

  話を戻すと、そうやって投票権がない人間として参政権の大切さを心から感じる一方で、周囲の日本の若者の中には投票出来るのにしていない人がたくさんいました。自分が出来ないからでしょうか、とてももったいないことをしているのではないか、と考えるようになりました。

  2つ目は震災の経験です。NZ留学中にクライストチャーチ大地震を経験し、その後、2011年3月に岩手に旅行に行きました。たまたま地元に帰った翌日に東日本大震災が起きました。TVをつけると、昨日までいた場所が津波に流される景色が目に入ってきたのです。いてもたってもいられず、南三陸、気仙沼でボランティア活動に従事しました。そして京都に帰ってからも福島から避難してきた方々を支援する活動をしました。震災で被害を受けた方々を目の当たりにし、生きるためには政治の力が大切だと感じるようになったのです。 ところが政権が民主党から自公連立政権に移行した衆議院総選挙(2014年衆議院総選挙)では全国の投票率が前回より下がりました((筆者補足)全国投票率は52.66%、前回比6.66ポイント減)。これからの日本のあり方を考える選挙でこの投票率はおかしい、何とかしないといけないと思いました。

  3つ目に、海外を旅した時、「日本は素晴らしい社会主義国家だ」とある国の人に言われたことがあげられます。彼が言うには、日本は民主主義という名目のもと、長く一政党が国を治めるという社会主義の理想を実現している。社会保障は充実しているし教育の水準も高く戦争もない。実に素晴らしいと。一方で、世界各国の歴史をひもとくと、民主主義を勝ち取るために民衆が政府に働きかけ続け、時には多くの血が流れてやっと参政権を得た国が沢山あるということを知りました。ところが、日本では戊辰戦争や西南戦争があったとはいえ、西郷隆盛や勝海舟のような傑物がいたため無益な血を流さずに済んだし、現在の民主主義制度  もGHQによる占領政策で実現したと、諸外国に比べて極めてスムーズに近代化できた上に長く平和だったため、政治に関する権利の大切さが忘れかけられているのではないかという危機感を抱くようになりました。

 

若者が政治に無関心になりがちな風潮に対して

小室:なるほど。しかし若い世代の投票率は低いのが実態です。先の衆議院総選挙でも20代の投票率は32.58%、一方、60代の投票率は68.28%と倍以上です。一方、世界各国の20代の投票率を調べるとスウェーデンで75~80%、西欧諸国で60~70%であり、日本は特に低いですね。

  では日本の若者は昔から政治に関心がなかったのかというとそうでもないようです。昭和20年代、30年代での投票率は60%前後だったものの、元号が平成になった頃から投票率が急激に低下しました。何か政治が縁遠いものと感じるようになったのではないかと考えられます。
これについてどう思いますか。

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(出典) 総務省 ニュース一覧<投票制度・選挙制度・啓発その他>

 

:確かに良くないと思います。投票に行くきっかけを一度調べたことがあります。その結果によると、子供が生まれた、責任ある地位についた、など自分と社会との関わり合いをより意識するようになった時が多いのだそうです。それを聞き、人は政治をより身近に感じると関心が高まりやすいのではないかと考えるようになりました。

 そこで、首都圏では盛んだった団体ivoteの関西地区を立ち上げ、様々な機会を作ってきました。

 

ivote関西で行ってきたこと

:「政治」「選挙」と聞くと堅苦しいイメージがあると思います。それを払拭し、誰もが身近に政治を考えられるような空間を創ってきました。ただしどの政党、勢力に対しても中立的な立場を取っています。英語で言うとimpartial(偏見のない、公平な)なスタンスです。

  代表的なものを紹介します。

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①政治に関する教育プログラムのサポート

:京都市、宇治市、大阪市の公立、私立の中学・高校で政治に関する教育プログラムを提供しています。18歳になれば選挙権が付与される時代を迎えるため、時事問題について語り合える機会があると有意義だと考えたのです。

  クラスメートを10名くらいのグループにし、ivote関西の大学生がメンターになって議題を説明した上で、互いの意見を話し合えるようにしています。2015年の7月だと安保法案について語りあいました。

小室:えっ、先生から反対の声はなかったですか。

:逆です。是非テーマにしてほしいと言われました。

小室:意見が出やすくなるようにするのは大変ではないですか。生徒さんが顔を見合わせて黙り込んでしまいませんでしたか。

:確かに最初は様子見になりがちです。そこで意見を出し合いやすくするため、メンターになるivote関西のメンバーは毎週大学で練習してから教育現場に行くことにしています。実際に訪問先の生徒さんの様子を見ると、学校の先生より大学生の方が年の差が少ないためか身近に話しやすいようです。また、生徒さんの中には一度話し出すと先生が驚くほど詳しい存在がいて、会場が大喝采になることがありますよ。まさかそんなに語れるとは、ということのようです。

  もっとも、いつまでも私たちが教育現場に行くだけでは日本の政治教育そのもののレベルを上げることは遠い未来の話になってしまいかねません。ある程度のノウハウを蓄積して頂いたら、先生方が政治に関する教育を出来るように裏方でサポートすればいいようにしたいと考えています。

 

②橋下徹さんとの白熱教室(2014年12月)

小室:大物政治家と対談する機会を設けたことはありますか。

:はい、橋下徹さんと語り合う機会を設けました。会場に集まった300名ほどの学生に対し2時間ノンストップで橋下さんから、大阪で今のいいこと、悪いことについて話して頂きました。

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小室:橋下さんは報道機関が相手だと強いNO!を言うことがありますよね。会場がシーンとしてしまうようなことは起きませんでしたか。

:全然そんなことはありませんでした。橋下さんはとても気さくで、どんな質問にも明快に回答していました。私にとって一番印象に残ったのは、リーダーに必要なことはと聞かれ、「それは実行力、社会に何を残したか、結果が全てだ。」と言い切ったことです。政治家は言い訳せずに結果責任を自分のものとして背負うのですね。一つ一つの言葉に込められた説得力をしみじみと感じました。

  他にも山田啓二京都府知事と大学生らが京都府政を評価するアセスメントフォーラムや国政議員や地方議員らと身近に語ることができるイベントを企画し運営してきました。

 

③京都大学で戦争と平和について考える留学生によるシンポジウム(2015年8月)

:戦後70年の節目の年となった2015年、日本でも大きな議論が巻き起こった「戦争」「平和」「安全保障」「軍隊」などをテーマに、日本人以外の視点で留学生らが語る場を設けました。

   アメリカ人学生は原爆について、シリア人学生は爆撃の経験について、韓国人、中国人や台湾人の学生は、日中韓の今後の関係について語ってもらいました。会場では高校生たちも含めておよそ120人の学生たちが耳を傾けていました。
国により、背景により、政治に関して様々な考えがあるのだなと痛感しました。
この他にも、ivoteは「戦争と平和」をテーマにしたフォーラムなどを行ってきました。元自衛官であり、『防衛大学校で、戦争と安全保障をどう学んだか』の著者である杉井敦氏と星野了俊氏をお呼びし、「沖縄と米軍基地」をテーマとしたフォーラムでは約100名の参加者が集まりました。

  昨年10月には、世界経済フォーラム(ダボス会議)のボスニアのグローバルシェイパーをお呼びして、ボスニア紛争について語っていただくイベントを企画し、100名近い参加者が集まって頂きました。やはり年齢の近い話者が実際の紛争について語ると、参加者はリアリティを受け取ってくれるようで、本当に意義ある会になりました。

 

④日韓青年交流事業(2015年夏)

:日韓国交正常化50周年事業の1つとして、日本の外務省、韓国の行政自治部(総務省にあたる)から後援をいただき、大阪で5泊、ソウルで5泊の合宿を行い、日韓のこれからについて語り合いました。多数の応募から選抜された彼らが密な議論を通じて生み出した空間は、ネット上では決して想像できないほど、未来性があり、相手国を尊重する価値ある言論の空間でした。

  来年度以降は、東アジアの学生を巻き込んだ事業にしようと企画しています。

 

⑤若者超会議2015(2015年3月)

:選挙前にもっと政治や選挙を祭りごとのようにとらえてほしいという思いから、北欧で開かれている政治系のフェスを原型に開催しました。
視聴者数は約44,000人と学生主催の平日イベントでは最多だそうです。

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  会場には約650名もの方に集まって頂きました。この場にはX JAPANやLUNA SEAで活躍しておられるSUGIZOさんやアナウンサーの堀潤さんらにお越しいただきました。そして乙武洋匡さん、茂木健一郎さんなど著名人の方々からはビデオメッセージで民主主義について語っていただきました。

  これからの日本について多数の学生で多くを語り合い、小さな民主主義の形を生み出すことができたと感じました。しかも政治家は一切呼ばないのに最後まで場の熱量は湧き上がってくるばかりでした。こういう空間があればじっくり考え、意思表示をしてくれる同年代はたくさんいるのだと実感しました。

 

⑥女子会

:女子大生が集まり、キャリアウーマンの方や、若手の女性政治家の方をお呼びして、語り合う場を作っています。

  最近行ったものでは、いつもスーツを来ている議員さんたちの服装をコーディネートする企画が好評です。イケメン議員さんのコーディネートはSNS上でもかなりの話題を集めました。

小室:政治に関心のなかった人も参加しますか。

:今まであまり関心のなかった人にできるだけ来ていただくようにしています。

小室:集まってもらうために何か工夫していますか。

:基本的には付加価値があるようにする一方、「政治」という色を出さないで、他のメッセージやコンセプトを打ち出しています。たとえば、お店に交渉して会費を抑えつつも美味しいものが食べられるようにしています。

小室:効果はありますか。

:かなりあると思います。この会に一度でも参加すると、以前は投票に行かなかったという人でも9割以上の人が投票に行きたいとアンケートで答えています。政治に対する姿勢が「無関心」から「関心」へと変化していることから本当にやりがいを感じています。

小室:特定の政党を応援しているわけではないのですか。

:ivote関西自体は特定のイデオロギーや政党を支援していません。それが右翼系、左翼系の政治団体との違いであると自負しており、自分なりの考えを持つきっかけになるまでをミッションにしています。そのため、同世代の若者に対し、まずは政治の世界に触れる入口まで同行し、政治に関心を抱くようにすることを心がけています。もちろん、特定のイデオロギーを基に活動する方々や団体を否定しているのではなく、役割分担であると考えています。私たちは私たちなりに思考し、社会を自分事として捉える仕組みを作り上げたいです。

 

⑦Webメディア SeiZee

小室:情報発信をしているメディアはありますか。

:はい。日々、ivoteのFacebookページは更新しているのですが、それとは全く別に、SeiZee(しーじー)というWebサイトを立ち上げました。ここではライターを10代、20代に限定した上で記事を構成しています。

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SeiZee画面例(URL: http://seizee.jp/)

 

小室:政治について書いてあるのですか。

:政治に関してだけではありません。専門性があり、語りたいとライターさんが強く思っていることを記事にして頂いています。

  同世代に大切なものを投げかけて、同世代に響く叡智を集めたいと考えています。現時点でライターさんは30名ほどに増えていて、様々な切り口で社会を切り取って頂いています。

小室:どのくらいの人数が見ていますか。

:Active userは約1万人です。まだまだPV数は少ないですが、これからどんどん盛り上げていきたいですね。

⑧Barの運営

小室:リアルに話し合える機会はありますか。

:京都大学の近くにあるBarを、オーナーにご理解いただき、週に1回営業しています。

   毎回違う店長にお越しいただき、それぞれの店長が振る舞う料理を入口にして社会問題を考える空間にしています。たとえば昆虫食を振る舞ってくれる店長、東北の復興支援を続け、美味しい東北料理を作ってくれる店長、カンボジア支援を続け美味しいカンボジア料理を作ってくれる店長などなど、たくさんの名物店長に自慢の腕を振るっていただいています。

   ここに来ても堅苦しさは一切ありません。ただただ美味しいごはんとお酒を嗜みにいらっしゃる方がほとんどです。そういった入口から、少しずつ政治だけでなく社会問題全般に対して無関心な人にも関心をもっていただけるようにしたいです。

小室:本当に沢山の場を新たに作ってきたのですね。

Voters Party

続編は来週月曜日午前7時に掲載予定です。
■今後の予定
第2回:今後の進路展望
第3回:大学生NewsPicksピッカーの皆さんへ

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