【笠川健司】株で対人恐怖症を克服!NewsPicksランキング常連の投資家の人生。
2016/08/13
紙芝居で人生をたどるシリーズ【3人目】
「紙芝居で人生をたどるシリーズ」では、様々なジャンルの人物の人生にスポットを当て、紙芝居形式で送っていく。今回は笠川健司さんにインタビューをさせていただいた。
父親が少年ジャンプを買ってくれないから、日経新聞を読む
笠川健司がこの世に生を受けたのは、バブル経済がピークに達する約20年前の1970年のことだった。
笠川は、小学生の頃、コロコロコミックという少年雑誌を愛する少年だった。毎月父の買ってきてくれるコロコロコミックが、当時の笠川にとっては何よりの楽しみだったという。
そんな笠川も、いよいよ小学校を卒業し、中学校に入学するまでに成長した。そしてその時の笠川の読みたい雑誌といえば、今でも少年を熱中させている「週刊少年ジャンプ」だった。
そこで、これまでコロコロコミックを毎月のように買ってきてくれた父親に、当然のごとく少年週刊ジャンプを毎週買ってきてくれるように頼んでみた。
しかしその答えはNO。笠川は娯楽としての読み物を一時失ってしまったのだ。
そこで笠川の目に付いたのが、父親が好きで購入していた日経新聞や週刊ダイヤモンド。笠川はそれを勉強とも思わずに、夢中になって読んでいたという。
それら雑誌の中で興味を持ったものといえば、例えば「ダイヤモンド投資」や「マンゴーの木の投資」だった。今となっては怪しいものだが、当時の笠川はそれらに惹きつけられ、今も記憶に残っているのだという。
高校の入学祝いでファミコントレード一式を父にもらう
笠川にとっての高校入試は1987年、つまりバブル経済ピークの数年前のイベントであった。
経済誌などを娯楽として読んでいた笠川は、バブル経済の崩壊の足跡をすでに予想していた。そこで、景気に影響されにくい資格の取得可能な大学の付属高校を第一志望にして、そこに入学した。
その入学祝いに受け取ったのが、ファミコントレード一式である。これは父親が新光証券から手に入れたものであった。
ファミコントレードを使うことで、売買はできないまでも、実際のチャートの動きを追うことができた。これが投資との最初の出会いとなったのだ。
この出来事がきっかけとなって、父親の持っていた株主関連書類や預かり資産の一覧、投資信託の目論見書などを愛読するようになる。
システムディスクを改造し、アルバイトで他人の3倍稼ぐ
1989年、世間はバブル経済のピークで浮かれていたが、当時笠川はもはやバブル経済の崩壊は不可避であると確信していたので、予定通り資格取得の可能な大学に入学。薬学部に進学し、毎日実験で夜遅くまで授業のある日々が始まった。
学生だった笠川の成績は良かったため、特待生となり、学費免除で浮いたお金を貸付信託(当時高金利の信託銀行の金融商品)で運用する計画を立てた。しかし、親の年収基準がオーバーしてしまい、落選。結局、奨学金をもらうことはできず、賞状のみをもらったのだという。
貸付信託でお金儲けができないと分かり、次に始めたのが、教育社のトレーニングペーパーという教材の図版を書く請負アルバイトであった。
大学時代に生涯で一度の借金をして、中古のPC9801FRを購入することでその仕事をスタートさせた。
その仕事内容は、プログラムのシステムディスクを貸与され自宅で行うものだったので、これを無断で改造し、さらにラムディスク対応のドライバーも開発。これにより、処理能力を通常の3倍に高めた。
処理能力が3倍に向上したことで、通常の3倍の速さで原稿をさばくことができ、給料も3倍得ることに成功した。薬学部の実験等で忙しい生活にもかかわらず、一番多い月では60万円程度を稼いでいたという。
ブラック企業に入社し、対人恐怖症に陥る
アルバイトの仕事に夢中になった笠川の技術はメキメキと上達し、最終的には正社員のできない仕事を任されるまでに至った。
仕事量があまりに多いために、就活生にも関わらずまともに就活ができず、結果としてブラック企業に入社するはめに。
笠川がついた職業は薬剤師。朝早くから夜遅くまでの仕事が休みなく毎日繰り返されるような状態だったという。薬剤師の仕事は立ち仕事が多く、身体的な疲労が徐々に蓄積していった。
それだけにとどまらず、パワハラも当然のように行われ、立ち仕事による身体的な疲労に加えて、精神的な疲労もが笠川を襲った。
そしていつしか、仕事の時間以外は家の外に出ず、家の中でもテレビを見ながらボーッとするだけの日々が続いた。終いには、対人恐怖症に悩まされる始末。
大好きだった日経新聞を読む気力すら失い、暗黒時代と言っても過言ではないほどの生活を送っていたのだ。
株取引を始めて対人恐怖症を克服
対人恐怖症で引きこもっていた笠川を救ったのは、学生時代に情報収集していた株取引だった。
重度の対人恐怖症になると、人と会うことが恐怖となる。これを克服する一つのステップとして、猫や犬など、自分の行動に対して反応の返ってきて、しかも予想外の動きをするものと付き合うことが効果的な治療法となる。
笠川の場合、それが株取引だったのだ。株取引は、自分が株を買うことによってその値段が上昇したり減少したりと反応が返ってくる。また、人の心理によって動く部分が大きいので、予想外の動きが多い。
こうして株取引を始め、続けるうちに、笠川は本来の人間性を徐々に取り戻していったのだ。
情報収集のためにNewsPicksを始める
株取引を始めてからというもの、日経新聞も再び読むようになった。また、情報収集として、日経新聞以外にも2ちゃんねるのニュース系のスレッドも読むようになる。
新聞社の書いた記事だけでなく、それを元に考えた多数の人間の意見を知る場所として、2ちゃんねるは最適の場であったからだ。
これらを効率的に読みさばくために、笠川は、それらを自動収集してオフラインで購読するシステムを開発して運用することを始めた。
しかし、ある時を境に、2ちゃんねるのRSSの変更に伴って、オフライン購読ができなくなるという事態が起きてしまう。
情報収集手段の一部を失った笠川は、2ちゃんねるに代替するものを探すべく、アップストアにあったニュースアプリを片っぱしからダウンロードし、2ちゃんねると経済誌を兼ね備えたニュースアプリNewsPicksに出会った。
NewsPicksは経済誌と2ちゃんねるの要素を兼ね備えているだけでなく、当時からホリエモンが利用していたサービスであり、笠川はこのアプリが今後伸びることを確信したという。
これがNewsPicksユーザーランキングで常に上位を維持する笠川健司とNewsPicksとの出会いであったのだ。
NewsPicksは娯楽
株のための情報収集の手段として始めたNewsPicksだったが、意外にも投資関連の情報で役に立つものは少ないという。そして今では完全に娯楽としての利用へと移行している。
NewsPicksを娯楽として面白いものにする一つの要因は、NewsPicksのランキング制度だ。NewsPicksランキングとは、一週間の間に、ユーザーのコメントにlikeをしたユーザーの数をランキングにし、30位までを公開しているものである。
笠川は、likeを取るためにさまざまな実験を行い、さまざまな手法を考えついた。今では有効でない方法らしいが、肩書きの文字列によってコメントが記事の上位に位置するようにする裏技などもあったという。
また、総合トップというカテゴリにアップされた記事にできるだけ早くコメントをするために、スマホを両手に持ち、片方のスマホで記事を開き、もう片方のスマホでコメントを書くという、いわば二刀流の方法でコメントをつけるという方法も実践したという。
NewsPicksにおける笠川健司のナゾ
NewsPicksで笠川はあまり自分の情報を開示しない、ナゾの多い人物である。そして多くの方にとっての笠川に対するナゾは、以下の3つであろう。
・プロフィールに書かれてある「投資は壮大なブラックジョークの実験場」というモットー
・「アスブリシュヤ 臨時対策平社員」という肩書き
・一切の情報開示をしない毎回のコメント
■ナゾ1:投資は壮大なブラックジョークの実験場
笠川のプロフィール欄には、「投資は壮大なブラックジョークの実験場」というモットーが書かれている。
これの意味するところは、投資はジョークのネタの宝庫であるということである。投資に関する笑えるネタを研究することと投資は両立するのだという。
例えば、2015年6月に中国株が下落するという出来事があった。この少し前、サイボーグ009の替え歌で上海のビルが崩壊するPVがあったらしい。この二つの知識を組み合わせることで1つのブラックジョークが完成するということだ。そこでそのPVのリンクをコメント欄に貼り、その替え歌を作ったのだという。
■ナゾ2:アスブリシュヤ 臨時対策平社員
NewsPicksには機械的に行うコメント順位のアルゴリズム以外にも、ヘビーユーザーに対しては個別に重み付けがされているらしい。
笠川はその重み付けがかなり低い方らしく、ひどい時には笠川が5likesを獲得しているにも関わらず、0likeのコメントの下に位置したこともあったそうだ。そして最近の傾向としては笠川のコメントがとある記事においてもっともlikeを獲得していたとしても、2番目にlikeを多くとっているユーザーの約2倍以上のlikeを得ていないとコメントのトップには位置しないとのことだ。
この状況を、インドのカースト制度の最下位に位置する身分の「アスブリシュヤ」と掛けて、自分の肩書きを「アスブリシュヤ 臨時対策平社員」と名乗っているようだ。
■ナゾ3:一切の情報開示をしない毎回のコメント
笠川のNewsPicksのコメントの印象は、笠川自身の情報開示をしないイメージや、周りのコメントのノリに左右されないというイメージがある。
これはナゾ1のブラックッジョークに関連している。ブラックジョークとは、基本的に自分の情報を出さない形式を取るものである。例えば、ブラックジョークで知られるMr.ビーンやチャップリンなどの個人情報は謎に包まれている。つまり、ブラックジョークの効いたコメントをするということは、個人情報を開示しないということにつながるのだ。
また、個人の情報を開示するユーザーが多い中で、個人情報を敢えて出さないということが逆に個人の印象を強くつける効果があるのではないかと考えているという。
投資家として成功し、NewsPicksでも存在感を放つ笠川健司に、今後の目標を聞いてみた。
「南海岸で悠々自適だけではつまらないので、ガバナンスはガバガバなんす、のような新経済用語を流行語大賞にノミネートさせるのが目標です」
笠川健司のキレのあるブラックジョークを日頃から見ているNewsPicksユーザーであれば、これが実現する可能性を想像せずにはいられないだろう。