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【コンビニ恋愛:第2話】毎朝7時にTheJapanTimesを買う

      2016/08/13

昨夜は興奮して眠れなかった。筒井の雪見だいふくでアドレナリンが亢進したためだ。でも不思議と今は眠くない。

明け方の6時、この時間にスーツに腕を通すのは何年ぶりだろうか。こんなにも朝早くから僕が出勤の準備をするのには、もちろん理由がある。

AIDMAの法則を利用し、コンビニ店員筒井を口説くためだ。本日より7日間、僕はAIDMAのAを連日にわたり実行する。

AとはAIDMAのAttentionのAで、和訳すると「注意喚起」を意味する。コンビニ店員に注意喚起とかいうと、何か危ない奴に思われるかもしれないが、そんなことは決してない。

注意喚起といっても、店内で奇声をあげたり、会計の済んでない商品をポケットに入れたりするなどの愚行で筒井の気を惹く気は毛頭ない。

僕は広告マン。広告マンとしての経験で培ってきた技術を駆使して、正攻法で筒井の注意を惹く。そう…

ザイオンス効果

だ。とある対象物に接触すればするほど親近感がわき、気づけば好きになってしまうというこの効果。

この効果を利用し、筒井の注意を惹きつけることでその他大勢の顧客という存在から一歩抜け出す。コンビニでどう応用するかって?それは、これからのお楽しみだ。

赤坂

そろそろ出るか。ローソン赤坂見附店の斜向かいのドトール、時計が6時55分を指すのを確認し、僕は店を後にした。

向かった先は、ローソン赤坂見附店。昨日の勤務時間帯より、筒井は朝のタイムシフトの人と予想したが、案の定筒井はレジ場にいる。

ティントーン、ティントーン

静寂な店内に響き渡る入店音。

いらっしゃいませ

その音に合わさた天使の声のハーモニー。朝から至福の時を迎える。

出勤ラッシュ前の時間帯ということもあり、店内に客は誰もいない。筒井を一瞥し、僕は新聞紙が置かれたラックコーナーへと向かう。

TheJapanTimes

とあるベストセラー本によれば、人は見た目が9割らしい。外見により9割方の印象が決まるのだ。この本に従えば、コンビニ客は買う物が9割

当たり障りのない商品が満遍なく揃うコンビニにおいて、購入する商品で他人と差別化をはかるのは難しい。しかし、朝の7時から英語新聞を買う客なんて、僕くらいだ。

毎朝7時にTheJapanTimesを1週間買い続けることで、ザイオンス効果がコンビニでも発動される。1日に何百人もの客を相手にするコンビニ店員に、接しているという感覚を持たせるには

決められた時刻に決められた物を買う

ことだ。おまけに、TheJapanTimesという英字新聞が、インテリというイメージを筒井に醸成させる。本当ならサーモンピンクのTheFinancialTimes誌で金融マンを気取りたいところだが、コンビニにFT誌は置いていない。

まあコンビニ店員の筒井にはTheJapanTimesとTheFinancialTimesの違いは分からないだろうから、「英語ができるインテリ」というメッセージを発する役割としてはTheJapanTimesで十分だ。

「210円になります」
「袋は大丈夫です。代わりに、に、肉まんを2つもらえますか?」

筒井に負担をかけたくない。そんな想いから袋は断ることにした。しかし、昨夜の雪見だいふくが頭から離れなかったせいなのか?なぜか肉まんを頼んでしまった。それも2つも。

しかし、この行動は予想だにしなかった効果をもたらした。

二人の時間

TheJapanTimesだけでは僅か10秒しかなかったであろう二人の時間が、肉まんにより1分へと延長した。蒸し器から取り出し紙袋に包む作業がある肉まんは、通常の商品と比べて客1人当たりにかける時間が長くなる。

明日は…

はんぺんだな

そう思い、僕は店を後にした。

※続く

目次
【第1話】コンビニ恋愛:街のホットステーションで惚っとする

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