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TPP、アメリカが新薬保護期間12年を譲らない理由を考えるために抑えておきたい10の数字

      2016/08/13

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TPPの最大の焦点と言っても過言ではない、知的財産分野での「新薬データ保護期間」について交渉が膠着しております。

米国は「12年」、日本は「8年」、その他の国は「5年」の保護期間を主張しておりますが、なぜここまで保護期間の年数に違いが生じるのでしょうか?理由は非常にシンプルです。

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上記グラフは、2005年から2008年における世界各国で開発された新薬の数になりますが、ご覧の通り、TPP参加12ヶ国の中でオリジナル新薬をまともに創薬できる国はアメリカと日本くらいです。

つまり、先発品を創薬できる国は長い保護期間を主張し、先発品を創薬できない国は短い保護期間を主張しているだけです。

では、なぜ明らかに主張が食い違うであろう各国とのTPP交渉に、TPP発足から4年遅れでアメリカ、7年遅れで日本がわざわざ参画したのでしょうか?

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上記グラフはTPP参加12ヶ国の2014年GDPになりますが、ご覧の通り、アメリカと日本のGDPだけで参加12ヶ国の80%近くを占めております。

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また、上記グラフはTPP参加12ヶ国の貿易依存度になりますが、ご覧の通り、アメリカと日本にはTPP参加国からの輸出を受け入れる十分な内需があります。

つまり、TPP参加国12ヶ国のGDP、外需依存度からして、この貿易協定はTPPという名の日米FTAであったのでは?というのが私見になります。

アメリカは日本に米を、日本はアメリカに自動車部品を売ることを第一義として臨んだ交渉であり、知的財産分野については、他国から輸入を受け入れる十分な内需を持つ両国の利害が一致することを盾に、有利な交渉を進められると踏んでいたのではないでしょうか?

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気になりますのは、なぜ断固としてアメリカが新薬データ保護期間12年を譲らないか?についてです。上記グラフは世界の医薬品2011年の市場規模になりますが、ご覧の通り、アメリカと日本で世界市場の半分近くを占めております。

アメリカ、日本を除くTPP参加国は、中南米、アジア・アフリカ・オセアニア地域の24%に含まれますが、この24%に中国、インド、アフリカというTPPに参加していない人口大国が含まれていることを考慮しますと、市場規模としてはそこまで大きくないと予想されます。

市場規模としてはそこまで大きくないアメリカ、日本を除くTPP参加国の医薬品市場ですが、先発品メーカーにとっては将来的に魅力的な市場になる可能性はあります。

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上記グラフは、TPP参加国であるベトナム、マレーシア、シンガポールにおける先発品の市場占有率を表しておりますが、ご覧の通り、ジェネリック比率が60%を超える欧米諸国と比べますと、先発品比率が非常に高いです。

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しかし、マレーシアはドラッグ・ラグ期間が日本並みに長く、世界で初めて新薬が承認された日から遅れること約3年目にやっと承認が下ります。

仮にデータ保護期間5年で交渉が決着した場合には、先発品が承認されてからわずか数年でジェネリック品が承認されるという珍事が起きます。これでは、どんなに先発品比率が高い国であっても、独占できる期間が短すぎますので儲けが限られます。

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では、保護期間の1年間の違いにより、どの程度儲けに影響が出るのでしょうか?圧倒的な売上高を叩き出す先発品を通称ブロックバスターと呼びますが、2013年に最も売れた先発品の売上高は、1年間で1兆円を超えています。

上記表は、ブロックバスターの2013年トップ10になりますが、ご覧の通り、10品目中5品目にアメリカと日本の製薬会社が開発した新薬がランクインしています。1年間の売上高から、データ保護期間1年の延長が意味する経済効果が、どれほど莫大なのか?ご想像頂けるでしょう。

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最後に、新薬データ保護期間の延長により莫大な儲けを手にする米国製薬会社のロビー活動についてのデータをご紹介します。

上記表は、米製薬会社から米政府への2014年の政治献金を民主党、共和党別に示しておりますが、ご覧の通り、ファイザー、サノフィ、メルクなどの先発品メーカーから、政府はガッツリと金を受け取っています。1),2)

この金を受け取ったからには、米製薬会社が有利となるような新薬データ保護期間の交渉を是が非でも勝ち取らねばなりません。絶対に負けられない戦いがアメリカ政府にはあります。

新薬開発は、莫大な研究開発費、長い年月を要するにも関わらず、その成功率は3万分の1です。ハイリスクを負っているだけにハイリターンを得る権利を主張する新薬メーカーの気持ちも分からなくはないですが、下記のようなデータもありますし…

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上記表は、売上高世界ランキングトップ10の製薬会社の研究開発費と営業・マーケティング費を示した表になりますが、ご覧の通り、米国製薬会社※赤フォントは、稼いだ金を研究開発よりも営業・マーケティングに培近い資金を費やしています。3)

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研究するためのセールスなのか?セールスするための研究なのか?数字に隠された真意は当事者のみぞ知りますが、医療という業界に身を置く以上は、マザーテレサのような奉仕の精神を忘れないで欲しいです。

REFERENCE
1)Letter to NEC Director Sperling in Support of TPP
2)Pharmaceuticals / Health Products: Top Contributors to Federal Candidates, Parties, and Outside Groups
3)Pharmaceutical industry gets high on fat profits

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